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黒字事業を赤字にする意思決定で売上2倍。 成功事例を取り入れ、卓越した成果を出す解釈力と実行力とは

事業を作る人なら誰しも、ナレッジや成功事例を参考に自らの事業に取り組まれると思います。
その中から何を真似して選んでいくのか、その人のセンスや目利きが非常に問われますが、一方、良い事例も「正しい解釈」と「正しい実行」がなければ成功に導くことが出来ません

本記事では、他部署の事例を自らのプロジェクトにうまく取り入れ、難しい意思決定を決断・成功させたマーケティング責任者の取り組みを紹介します。
この事例を基に、Speeeの「正しい事例の解釈」と「正しい実行」に関して紐解いていきたいと思います。
(※本記事では事業開発学会vol.2の磯目登壇パートを基に掲載しています。)

他事例を解釈、そして実行する際のヒントになれば幸いです。


本記事に登場する実行者、磯目圭吾
青山学院大学を中退し、2016年にSpeeeへ入社。女性系メディアのディレクターとして、開発からマーケティングまでと幅広い業務に従事。企画開発・推進を担い、同部署にて新規メディアの立ち上げをした後、イエウール・ヌリカエのマーケティング領域に携わり、Webマーケティングに加えてプロダクト開発や組織マネジメントに従事。事業の成長の根幹を担う。現在は、複数の事業の責任者を担い、既存事業の売上・利益を約200%成長へと牽引、併行して新規事業の立ち上げを成功させた成果から、全社年間MVPを受賞。

その事業開発に意味はあるのか

磯目が参画したのは、「ヌリカエ」というリフォームサービスができた3年目の年。
事業責任者、営業責任者、開発責任者、がいる組織に、リフォーム事業のマーケティング責任者として参画しました。


当時の事業は黒字計上。一般的に見るとヌリカエは順調な”うまくいっている”事業でした。
ただ、事業は長年横ばい状態で、売上の成長率が高まらない状態でした。

当然ながらマーケティング責任者である磯目はこの状況に満足してはいません。
それは単に”売上を伸ばしたい"という想いではなく
この成果水準ではSpeeeが行う意義のない事業になってしまう」と感じたからです。


Speeeには、事業開発を成功させるために大戦略のアウトラインであるサンドボックスを描き、それに基づいて実行することで事業の成功率を高める思想があります。今回は、Speeeの「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションに沿った事業になっているのか、という問い掛けでした。

一見して成功確率や投資価値を測りにくいものでも、戦略KPIと照合してこのベクトル上に乗っていることが確認できればアイディアの価値が認めることができます。逆に、アイディア単体としては魅力的でも、大戦略の前進に貢献しないのであれば適しません。 (引用:https://media.speee.jp/entry/bizdev03)


なぜこのままではSpeeeでやる意義がない、と考えたのでしょうか。

磯目は言います。

Speeeのミッションは、「解き尽くす。未来を引きよせる。」
僕らがやらなくともきっと問題は解決されていき、いずれ社会は良くなる。
ただSpeeeがいたからこそ、それが5,10,20年と解決が早くなる。そしてその先の将来の問題を解決することができ、社会をどんどん進化させることができる。

そういった信念を掲げているSpeeeであるなら、自分たちの事業が介在することによって、社会の進化に大きく貢献するような事業運営をすべき、最終到達地点が小粒で、成長の遅いものは僕らがやるべきものではない。

売上高の大きさは、事業が社会に生み出している価値の流通量の大きさであり、社会に与える貢献度の大きさ、とも言えます。Speeeは「未来を引きよせる。」ことをミッションに掲げてNo.1の成長を目指すことを存在意義としている会社です。

Speeeらしい事業を実現するために磯目は何がもっともSpeeeらしい事業開発なのか思考しました。

マーケティング責任者として、上記を打開する方法は様々あるでしょう。
たとえば、

  • 他事業の事例をもとに獲得単価はキープして黒字化を維持しつつ、レスポンス系の施策にかけ、リスクを負いすぎず売上を確実性高く伸ばしていく。
  • マーケットは拡大しており認知を増加させることで獲得件数を大きく伸ばすためマス広告を選択することで、ハイリスクハイリターンの投資を進める。

など。


磯目は次のような決断をします。

従来チャネルの獲得単価を2倍にし獲得件数を倍増させ、同時並行で必死にサイトのパフォーマンスを向上させる。しかしそれは半年間の赤字化を伴う

事例を解釈した結果、なぜ私は赤字化を選んだのか

イベントでは4択で磯目の選択を追体験してもらいました

「黒字事業を赤字化させる」
投資観点では珍しくはないことでしょう。ただし、従来まではストック型のビジネスが主流のSpeeeでは赤字に踏み切ることは珍しい意思決定だったのです。また、磯目は事業責任者ではなく、マーケティング責任者。一見難しい判断に見えます。


一方で、磯目は迷わず意思決定できたといいます。
それはSpeeeの他事業”イエウール”の事例を見て、「これはできる」と解釈したからです。


磯目は、ヌリカエに参画する以前は、イエウールのマーケティングを担当していました。
同様のWebマーケティングをイエウールでも実施しており、そこでの知見やノウハウを学んでいました。その中で、アライアンスでのWeb集客を経験していました。

アライアンスパートナーと協業しての集客は、自社の商品や魅力をパートナーにPRする活動です。

  • 単純に彼らにとって収益的に魅力的な案件であると同時に、取り組むことの社会的意義や価値のある事業だと感じていただくこと
  • 取り組み開始後も、パートナー任せにするのではなく、ともに成長していくために協働し、試行錯誤すること

イエウールからそういった向き合い方が欠かせないことを感じていました。

イエウールで上記のような経験・学びがあった一方、業界特性、ビジネス特性上イエウールとは異なる部分をヌリカエで再解釈していきました。

リフォーム業界の特性として「将来的にリフォームを行いたい」「いつかはリフォームしなけばならない」といった多くの潜在顧客が存在します。

ユーザー特性の異なるイエウールと全く同じようにやっても成功しないため、この事業におけるエンドユーザー理解を深め、ユーザーの態度変容を促進できるプロモーション方法の開発のPDCAを回していきました
そのため、仮説検証の早さ、アジリティの高さを第一にし、パートナー選定や社内のオペレーション構築をしていきます。

また、一般的なECや無形商材と比較して、アライアンスでの集客を成功させている競合他社やサービスがある業界でもなかったため、
ゼロから新しい協業関係を構築できるパートナー選定と同時に知名度を上げていくための新規の協業提案活動に取り組みました。

最初はどのパートナーの方に参画いただくべきか、どういった段取りで知名度を高め、どんなパートナーの方々の参画の輪を広げるべきかといったことを設計しながら進めていきました。

マーケティングにおける本質的な戦い方をイエウール時代の先人たちに学ばさせていただき、リフォーム事業における勝ち筋を自分なりにチューニングし、実行していったのです

解釈、そして実行

彼は、決断だけではなく、正しい意思決定にするために実行にもこだわります

今回は肝である交渉力、バイイングパワーに立ち返りました。市場における優秀なリソースを獲得し、適切に運用することで、事業にとって強力な集客アセットにすることができるのです。要するに、本気でアライアンスパートナーと協業してのマーケティングに取り組みました。

パートナーに直接会い、提案することをとにかく重視。
月で20-30社程度を訪問し、延べ数百社に訪問。

当時の役員も提案の場に同席させ、「いかに一緒に取り組みたいか」メッセージを送り続けました
とにかくがむしゃらに。自分の正しいと思った意思決定を正しく実行していきました


その結果、一時的に赤字化させたものの、1年後には200%の成果が生まれました。

正しく解釈し、正しく実行するとは

Speeeでは同時期に多数の事業が立ち上がり、まるでスタートアップが複数存在するような企業です。
ここで生まれるヒト、モノ、カネ、ナレッジの共有はSpeeeの高い事業成功率の大きな要素となっています。

参考にする事例が多いのであれば、ノウハウをすぐに取り入れてうまくいくのではないか?そう思われるかもしれませんが実際は異なります。
ただ成功事例をやみくもに転用するような事業はうまく行かず、成功の鍵には上記同様に解釈力と実行力が不可欠なのです。


事業部長の池田は当時の磯目についてこう語ります。

事業や自分の仕事が上手くいっていなかったり、失敗しているときに現状を変えようとするのは自然な動きです。一方で、上手くいっているときに現状を変えに行くのはとてつもないパワーがいることです。
このまま進めれば目標達成できるであろうときに、目標未達になりえる打ち手を選択してさらなる高い水準の成果を目指す、ここにSpeeeらしさが存分に現れていたので、私としては結果がどうあれ価値ある取り組みになることに確信めいたものがありました。

意思決定の内容も良質だと感じていました。
事業成長の打ち手を考えるとき陥りがちな意思決定として、極端な選択肢を並べてどちらかを選ばなければいけない、と考えてしまうケースが一般的に多いです。低リスク低リターンか、ハイリスクハイリターンか、などどちらかを選択しなければいけない、というようにです。
このような”極”の意思決定は間違いであることが多いと言えます。顧客理解と提供すべき価値、事業特性や固有の状況から離れ、他社がこうやっているから、というように一般的な成功事例を引き合いに出して選択の妥当性を判断してしまうケースです。

そこに陥らず、磯目はミドルリスク・ハイリターンになるような判断や方法を選択していました。
顧客への提供価値の本質や、それを実現するための方法について単にイエウールのやり方を転用する、ではなく本当に成立するかを徹底的に考え、合理的に成功を確信できるレベルの道筋を描いていました。
我々がやることの価値や自分がやる価値があれば、低リスク・ミドルリターンに、ミドルリスク・ハイリターンにできる道筋があるのが実際で、この組織能力こそ競争優位性なのです。

その事業固有の価値を適切に捉えて打席に立ち続ければ、単発でROIが合わなくても中長期では必ず成功し高いROIを実現できる、大戦略のアウトラインの中でチャレンジすることの価値がここにあります。
この質の高いチャレンジだと思ったからこそ、安心して任せることができました。

「正しく解釈して正しく実行する力」この力があったからこそ意思決定を磯目は成功させていくことができたのだと思います。