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誰にでも事業経営をする責務がある。~Speeeで事業を創りつづけるセールス出身メンバーの意思決定とは~


セールスの成果は事業の核となり、事業の売上創出をけん引します。自分が出した結果が事業を伸ばしているという自負があるセールスパーソンは多いはずです。

そんな誇りを持つのと同時に、自身の得意分野と事業や経営との繋がりを見いだせないこともあるでしょう。「マーケティングはデータ分析が得意なメンバーがやるもの」「新規事業開発は経営企画部がやるもの」と無意識のうちに役割を狭めて意思決定をしてしまうことはあるのではないでしょうか。

たしかにセールス職のキャリアパスは、セールスリーダーやマネージャーなどの管理職へのキャリアアップ、業界を変えての新しいチャレンジなどが一般的なイメージです。

しかし、顧客の声を第一線で聴き続け、業界の課題や自社サービスの課題の深淵に触れたセールスパーソンが、セールスという役割にとどまらず自社の事業開発に携わりたいと思うのは健全な思考でしょう。

Speeeは「事業経営」を掲げ、事業開発を天才や革命家に依存しない私たちの覚悟で実現されていくものだと捉えています。この記事では、「イエウール」のセールスとして第一線に立ち、誰よりも顧客と事業に向き合ったメンバーが新たな事業開発をするまでに至るひとつの事例を紹介します。

これは決してサクセスストーリーではなく、質の高い顧客との接点を持ち続け、泥臭く事業経営に向き合うメンバーのひとつのエピソードです。

なお、本文は2021年6月23日に実施した、Speeeの事業開発の科学を共有する目的の非公開イベント「事業開発学会」vol.2 意思決定のプレイブック での伊藤の言葉で記載していきます。

伊藤 大貴(31)
2013年大手製菓メーカーに新卒入社。既存セールスとして担当クライアントで扱う自社売上を1年で7倍に成長させ、次のステップとして2014年7月、当時100名未満のベンチャーだったSpeeeへ。イエウール事業の立ち上げ期から携わり、新規および既存セールス、ディレクターと様々な角度から事業拡大に貢献。2017年下期全社MVP・部門内MVPなどを複数受賞。2021年通期ベストマネジメント賞受賞。

「現場に触れられるセールスがもっとも事業開発に近い」とは

僕の仕事人生はセールスとして始まっています。学生時代からセールス代行会社でインターン生として働き始めました。深みがあり探求する面白さもある職種です。
しばらくはセールスの仕事を通じて自分自身を成長させ、30歳までには事業立ち上げに挑戦できる人になるという目標を掲げていました。

同時に、事業立ち上げはマーケティングの人がやるものだという固定観念もありました。

事業を伸ばしていくことを考えると、例えばSEOをどう対策するか、リスティング広告をどう最適化するか、などのマーケティングの話は避けて通れません。WEBサービスの界隈でも、事業企画の担当者は大体マーケティング出身者です。

けれども僕個人としては、顧客がサービスのどこに不満を感じていてどう改善してほしいのか、一字一句情報を得て市場の課題やニーズを汲み取れるのはやはりセールスなのだという信念めいたものがありました。

そういった思いもありながらセールスマネージャーに昇格し、奮闘している中で、
よりSpeeeが不動産売却マーケットで業界の負を解消し、付加価値を高めていくためのサービスの企画を提案しました。

実はこのセールスマネージャー1年目の時点では自分で納得できる成果が出せておらず、2年目では圧倒的な成果を出してマネージャーとして花開かせたいと目論んでいるタイミングだったので、この進めている企画の事業責任者を誰がやるのか、については非常に悩みました。

セールスマネージャーを後任に引き継ぐことも、マーケティング経験者でもない自分が新規事業を立ち上げ責任者をやる事も不安が残るなか、検討した選択肢は4つ。

考えた末に ③セールスマネージャーを後任に引き継いで、新規事業の責任者をやる という意思決定をしました。

不動産会社の意見からできるサービスなら、実際に顧客の声を聞いているセールス出身の自分の方がマーケティングの人よりも強い意思でリーダーシップをもって事業を推進できると思ったのです。

実際、業界を代表するような大手企業の担当者から足で稼ぐ営業スタイルを変えたいという話を直接聞いており、業界の負を自分の肌で感じていたのもあります。

僕がやる方が事業全体の勝率が上がる、自分がやると覚悟を決めました。

新規事業のリソースを調達する上で必要なこと

新規事業のチームデザインから始まります。「早く顧客にプロダクトを届けたい」僕はスピードをとにかく重視して開発エンジニアをアウトソースすることにしました。

しかし、その稟議は事業全体の経営判断として却下されてしまいます。

あれ、おかしい。費用は確かに高額ですが、これがないと事業が進みません。
僕は本当にコストは使えないのかと前提を疑って、思い切って追加で稟議承認を獲得しにいきました。

承認を獲得しようと話し合いを重ねていくと、開発のアウトソースを却下された本当の理由は金額ではなく「その投資が戦略とどう紐づいているのか不明瞭だったこと」だとわかりました。

たしかに僕は投資の妥当性を説明するときに投資対効果については根拠を元にしっかり説明しましたが、DX事業本部での大戦略との整合性は確かめていません。

改めてSpeeeの事業開発の考え方をインストールし直し、事業の大戦略に今回の事業開発のスピードを落とさないことがなぜ重要かを熱く語りました。

結果的に開発リソースを確保することができ、プロダクト開発をやっと前に進めることができました。

ここでは自分の視野がまだ一セールスの視野であったことを反省しました。そもそも「承認を獲得する」というスタンスは経営者や責任者の視点というより、良くない意味で会社員ぽいなと。

同時に、Speeeの事業開発はミッション・ビジョンに貢献する戦略的な打ち手になっているかという視点で吟味され、戦略という”仮説”がクリアであれば非常に速やかに実行に移されるということを体感しました。

media.speee.jp


新規事業をスケールさせていく事業責任者の視座とは

セールス時代に追い続けた数字への執着心には自他ともに強いものがありましたが、目標に事業責任者として向き合ったときはかなり視野・視座を上げる必要がありました。

すまいステップという新規事業を2020年9月に立ち上げ、3ヶ月後の単月の目標の達成率が、実は16%だったんです。実績の年間の進捗率ではなく単月の目標の達成率で、16%です…。

セールスで高い成果を出しマネージャーにまで到達した自分が責任者を務めた事業でこんな数字を出してしまうとは屈辱すら感じます。

勝ち筋を具現化していくための経営能力が不足していることを痛感し、事業計画との差分が日に日に広がっていって、自信がなくなりました。


そもそもセールス出身でマーケティングの知識も経験もなかったので、Webマーケティングを軸とする事業創造を自分からやっていくのは難しかったんじゃないかと自己嫌悪に陥り、会社に行きたくなくなることもありました。

そんな目標達成率16%の状況での4つの選択肢はこちらの通りです。

実は、まず ②事業責任者は別の人間に引き継いで、新規事業のセールス責任者をやる という選択肢を本気で考えました。
しかし、16%という結果自体が別になくなるわけではなく、顧客のニーズが消えるわけでもありません。

もはや、結果を引き受けて前に進むしかないと思い、③現実的に目指すことが可能なストレッチ目標を設定しなおす という意思決定をしました。
この段階で当初の目標が絵に描いた餅状態になってしまっており、現状の課題を抽出できない現状があったからです。

実は目標を下方修正すること自体がすごく億劫というか恐怖でしたね。自分で「これはできません」と宣言するような気持ちになってしまうので...。

とはいえ正しくPDCAを回せる状況に軌道修正する必要がありました。現実的に目指すことが可能な数値目標を設定し、1.5年~2年かければ当初の計画を達成できるリカバリープランを策定することができました。

少し勇気が必要でしたが、事業・組織のパフォーマンスを最大化させる良い意思決定だったと思います。

努力の方向性を事業の大戦略と合わせる

これらの意思決定から得られたものとして2つあります。

1つ目は、社内稟議が通らないなどの理由で無理だと思うときにまず前提を疑ってみること。僕自身がSpeeeの事業経営、事業開発の考え方についての解釈を誤っていたことで、知らぬ間に思考のスコープを狭めてしまっているということがありました。Speeeでは「予算を獲得する」という考え方では責任者は務まらず、「既存より優れた投資プランを提案・実行できる人」が責任者になります。
これは非常に勿体なかったので、むしろそこで気付けてよかったと思っています。

2つ目は、理想を掲げてがむしゃらに頑張るのではなく、注力すべきポイントを決めて正しい努力をすること。
セールスでは目標というものを自分やチームを鼓舞するために「ここまでやります」と高く設定することもありましたが、事業を推進する上ではもっと現実的に捉える必要がありました。
目標を下方修正することは恐怖感すらありましたが、正しく設定することが事業をグロースさせる上でも組織のパフォーマンスを出すためにも、非常に重要だということを痛感しました。

僕自身は本当にSpeeeのブランドコンセプトである「天才は、要らない。」に共感しています。天才ではない普通のビジネスパーソンこそ事業経営に対して自論やアイデアを提言し、新しい機会を得て深い学びを続けることができると思います。



この伊藤のようにセールスパーソンとして高い結果に執着し続けた結果、既存サービスにとどまらず新規サービスをつくることで顧客への提供価値を広げていったケースもあります。

新しいプロダクトやサービスは、必ず現場での顧客との会話から生み出されています。革命的な1つのアイディアや分厚い企画書ではなく、大量の現場の声を聞いたメンバーがリーダーシップを発揮し始める瞬間を待っています。

Speeeの事業開発は一部の天才によっておこなわれているわけではありません。また、必ずしも顧客接点から遠い企画部のような部署で行われるものでもありません。顧客に対峙する現場から生まれる推進力があってこそだということを知っていただけると幸いです。