「天才や革命家ではない集団による事業開発」
これが私達Speeeの事業開発です。一見派手さがないように思われるかもしれません。
他方で、私達Speeeは、祖業のモバイルSEOにおいて、スタートアップながら2年で業界シェアNo.1を獲得し、事業と市場をともに急拡大させてきました。
そして、その後も様々な事業の開発を成功に導いてきました。
天才や革命家ではない集団がどのように成し遂げたのか。
そこには私達の覚悟があります。今回の記事ではこれらを解き明かしていきます。
紐解くのは、SpeeeがSpeeeになる前の話。
「天才は、要らない。」というキーワードとともに、弊社代表の大塚がSpeeeを立ち上げるまで、そして祖業ビジネスの成功を解き尽くしていきたいと思います。
また、本文は2021年6月23日に実施した、Speeeの事業開発の科学を共有する目的の非公開イベント「事業開発学会」の大塚登壇パートを基に記載しています。
1985年、埼玉県生まれ。メディア関連事業の会社を創業し、2011年に譲渡。同年、25歳で株式会社Speee代表取締役に就任。2015年にAERAの「日本を突破する100人」に選出。
Speeeは「デロイト トウシュ トーマツ 日本テクノロジー Fast50」7年連続成長企業上位ランクイン。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキング上位連続受賞などがある。 2020年7月、当時の東証JASDAQ(スタンダード)上場。
大塚がSpeeeを立ち上げるまでの道のり
大塚が経営者を志したのは幼少期の頃。
もともと大塚の父親が経営者で、物心ついたときからビジネスについてよく話してくれていたといいます。
経営者が僕のヒーローだった
世の中にはこんなにすごいことを考えて実行している人がいるんだ、と一つひとつに感動していました。経営者が明確な意志を持って考え出した戦略によって、僕らは満たされた日常生活を送ることができている。そう考えると、めちゃくちゃワクワクしたんです。(引用:https://newspicks.com/news/3398715/body/)
経営者である父親の背中に、起業家への憧れを抱き、
中学・高校時代からビジネス書を読み漁るほど夢を育てていました。
起業家への道と同様に、夢中になっていたサッカーは高校時代で見切りをつけ、起業に向けて読書や株取引などの自己学習を一気に進めていきました。
人よりも長い起業浪人時代。
そしていざ自分の事業を考え始めたとき、大塚にある恐怖が襲います。
「事業開発って一握りの天才しか出来ないのではないか」
大塚が読むビジネス書に取り上げられる経営者は、まるで大成功を遂げた天才のように記されているような存在。
一握りの天才しか経営者になれないのではないか。
具体的な起業のプロセスを想像していく中で、突然長年の夢が絶たれる恐怖に襲われたのです。
そんな中、セブン&アイ・ホールディングスの現名誉顧問の鈴木敏文氏のことを知ったことで転機は訪れました。
鈴木氏は「流通王」と呼ばれるほど市場に変革を起こしていますが、奇抜なキャリアや幼少期を過ごしたわけではなく、一般就職をし、経理部を経て、その後、セブン-イレブン・ジャパンを世界レベルの事業体へと飛躍させていきます。
「イノベーションは狙って起こせる」
鈴木氏の経験や戦略から大塚はこのようなことを感じたのです。
イノベーションとは、一定の手続きを踏むことで、ある程度の確率で狙って創出できるのではないか。
それならば、考え方とやり方次第であり、自分も夢を諦めなくても良い。人生をかけて企業経営に向き合えるのではないか。
そのために深めるべきは、事業開発であると知り、再び夢に向き合おうとします。
天才に依存しない創業事業の成功
私達がはじめに選んだ事業はモバイルSEO事業です。
そこで立ち上げから2年でシェアNo.1を確立しました。
私達がシェアNo.1を取れたのには3つの考え方があります。
・①急成長市場を選ぶ
・②自分たちがすでに持っているものは前提としない
・③コンサルティングモデルの本当の勝ち筋を見つける
これらを科学して、当初目論んでいた市場占有率を獲得するに至りました。
ここでは第1回目の事業開発学会での大塚の言葉を借りて説明していきたいと思います。
①急成長市場を選ぶ
そもそも急成長する会社の理想像とはなにか。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、それは急成長市場でNo.1であることです。
では、急成長市場とはなにか。ここでは市場規模の大きさは関係ありません。
市場の変化率の大きさです。
変化が大きい市場を確実に捉えることが急成長市場を選ぶ方法です。
創業時の2007年はブログ、SNSが既に日本のカルチャーとなりつつありモバイルSNSが勃興しているくらいのタイミングでした。
当時、ガラケーのインターネット接続数は増えていました。
この業界こそ急成長市場であることに目星をつけSpeeeは参入していきました。
②自分たちが持っているものは前提としない
一般的な事業開発のセオリーは、すでに保有している資産を活用することです。
ここでいう資産は、資金という意味合いではありません。
顧客理解や、市場理解、顧客接点や、消費者接点。
そういったソフト・ハード両面の広義のアセットを資産と表現しています。
その資産を活かすのが事業開発のセオリーであり、今のSpeeeでもとても大事にしていることです。
あくまでも、ここでは、創業期の私達においてという前提の上での話であることを予めお伝えしておきます。
ここで言いたいのは、
創業期の私達がもっているものなど、当時は限られていたわけです。
私自身の年齢も、22歳程度。
その中で、持っているものなどを前提におくよりも、極めてフラットに、成長市場を捉えることから始めるということです。最初からHowに縛られずに、What/Whereを直視すると言い換えても良いかもしれません。
市場選定の後は事業選定です。
たとえばモバイルSEO市場の中であればシステム受託、サイト制作、広告代理事業など、市場の中には多数のビジネスモデルがありますが、そこから何を事業とするのか選択する必要があります。
急成長企業とは、急成長市場でNo.1であることです。
圧倒的にNo.1になるためには、圧倒的No.1になりえる戦い方を選択しなければいけません。
そのため、私達は、数あるビジネスモデルの中で高いシェア率(40%以上とれるもの)を選択し、そのシェア率が有利に働くような環境を作ることです。
ここで重要なのは先程も触れたように、
”自分たちが今出来ることは棚に上げて考える”ことでした。
自分たちの持つものを最初に考えることは一見重要に思えます。
しかし、大したアセットの無い自分たちが、そのことを過大視すると大筋を外す危険性があるのです。
目的ではなく手段に囚われすぎるためです。
Speeeでは「目的思考」という言葉を大事にしています。フラットに見ることが目的を追求することに繋がり、それが本質を掴む上で必要な要素です。
最終的には現実的に実現可能なものを選択しますが、収集した情報やデータを並べ、そのデータを様々な角度から並び直し、純粋に市場を見つめることが基本姿勢でした。
私達はシェアNo.1を取れるものを純粋に考え続け、
その結果モバイルSEO×コンサルティング型のビジネスモデルを取ることに決めました。
③コンサルティングモデルの本当の勝ち筋を見つける
事業が決まれば、その事業の勝ち筋を見つけます。
私達の場合は、先端領域のコンサルティングの勝ち筋を考えることでした。
それを因数分解すると、人材×ストック型モデルの2つに分解されます。
一般的には、人月ビジネスのコンサルティングモデルはストック型になりにくいタイプの事業ともいえます。
いかにストック型のモデルにするのかを私達は意識しました。
単純な人月モデルではないにしても、労働集約的な側面もたぶんにある。
であるならば、優秀な人材を獲得し続ける仕組みと、高付加価値サービスを提供し続ける仕組みを回しつづけることができるのかが重要になるわけです。
ここでも②と同様に今自分たちが持っているものは考慮せずに、フラットに考えていきます。
その結果、高付加価値・高価格設定によって、得ることができる高収益を人材に再投資し続けることが答えとなりました。
その為にも、価格決定権を持つだけの、市場での影響力が必要になるわけです。
それが高いシェア率の重要性です。
取りやすい案件から取って価格設定がルーズになることを避けたり、どの顧客セグメントからしっかりと獲得をしていくかにこだわる等々、投資サイクルが持続的に回り続けるモデルを構築することで、当時では珍しかったデジタルマーケティング領域における高価格帯のコンサルティングモデルをつくりました。
市場のシェア率にこだわった我々は、創業から3年ほどはとにかく『モバイルSEO専業の企業である。そのほかのことは一切やっていない。顧客にどんなニーズがあってもそれは対応しない。モバイルSEOのコンサルティングだけやっている。』と社内外に言い続けました。
社内のメンバーからも『お客さんがこんなものもやって欲しいと言っている』という声もたくさんありました。とにかくモバイルマーケティングの市場が伸び盛りでしたので。
そのすべてをお断りし続けるように指示していました。
圧倒的なシェアを取るまでやることをぶらさせないようにする為です。
デジタルマーケティングのカンファレンスやイベントに参加しても、
ことあるごとに『モバイルSEO専業』と大々的に、広告をしていました。
これを続けると、とある時期から潮目がぐっと変わってくるのです。
急成長市場の立ち上がり期に仕掛けたこれらの勝負は見事にハマり、瞬く間に、モバイルSEO=Speeeという業界認知を不動のものにし、人材採用から顧客獲得のサイクルがぐるぐると回りはじめたのです。
私達は”成長市場を選ぶ”,”自分たちが持っているものを考えない”,”コンサルティングモデルの本当の勝ち筋を見つける”ということを徹底的に科学し、天才に依存しない私達は”狙って事業を立ち上げ、狙って市場のシェアを広げていく取り組みに成功をしました。
Speeeの連続的な事業開発
このように、モバイルSEO事業から私達は事業を展開し、
上場するまでの14年間、外部資本に頼ることなく、自己資本のみで連続的な事業開発を続け、現在10の事業を狙って作ってきました。
コーポレートビジョンには、”「解く」の連鎖で、より大きな解決を”、”事業を開発することが事業”という言葉があり、事業開発を連続的に行うことへの想いや、意義を明文化してきました。
私達は、事業開発には未来を引きよせるロジックがあると思っています。
大塚は語ります。
事業創造は市場創造に繋がり、市場創造は産業の創造に繋がり、産業の創造は社会の創造に繋がって、それは「未来を大きく引きよせる」ものであり、実は狙える人たちにとっては、狙ってやれること。
現代社会の難問は複雑性が高く、一過性の課題解決では価値を届けられません。
連続的な事業開発だからこそ、未来は引きよせられる。
だからこそ私達は事業開発を連続的に続けていくのです。
「天才は、要らない。」
この言葉の正確な意味は、
天才的な才能を否定するものでは決してありません。
世の中には、天才的な才能を有した、人材はいます。
彼らの影響度や推進力は目をみはるものがあり、私達もそういった人物の才能に敬意を持っているし、同じミッションに向かっていけるときには幸運を感じることもあります。
ただし、天才に依存すると、チーム自体は長い目で見ると弱体化していくことがあるのです。
つまり、天才は、要らない。という言葉は、
天才がいたとしても、決して、そこに依存することはしない。それが持続的に事業を開発し続け、未来を引きよせて行きたいと考える、天才や革命家ではない私達の覚悟でもあります。
続いては、事業開発を成功させるための経営思想について紐解いていきたいと思います。
次回予告
事業開発の壁を破壊するための4つの創造