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AIものづくりコンテスト『S-1グランプリ』で見えたAI民主化の未来

はじめにーAIは、専門家だけのものではない

DX伴走支援コンサルティングサービスのバントナーは、AIの可能性をもっと身近に感じてほしいという思いから、ビジネス部門主導でAI活用をどんどん後押ししています。そんな中、2025年4月に社内AIコンテスト「S-1グランプリ」を開催しました。

コンテストのテーマは、Difyというツールを活用し、日常業務の課題を解決するAIソリューションを自ら考案・開発するというもの。エンジニアだけでなく、営業やコンサル、マーケなど、さまざまな職種から20名以上が参加し、それぞれが5分間のプレゼン形式で自分のアイデアを発表しました。


Difyとは?ビジネス部門のAI活用を加速するノーコードツール

参加者たちが使用したツール、Difyとは、AIアプリケーションを専門的なプログラミング知識なしで構築できるノーコード/ローコードプラットフォームです。従来であればエンジニアによる複雑なコーディングが必要だったAIアプリケーションの開発が、直感的なインターフェースを通じて、ビジネス部門のメンバーでも実現できるようになります。


主な特徴は以下の通り:
ビジュアルインターフェースによるワークフロー設計
ドラッグ&ドロップの操作で、AIとの対話の流れや分岐を視覚的に設計できます。複雑な対話シナリオも、フローチャートのように組み立てていくことが可能です。

プロンプト(AIへの指示)の最適化
AIに対してどのように指示を出すべきか、その「プロンプト」を効率的に作成・テスト・改善するための機能を備えています。優れたプロンプト設計がAIパフォーマンスの鍵となります。

多様なAIモデルとの連携
OpenAIのGPTシリーズをはじめとする様々な言語モデルと接続でき、目的に応じて適切なAIを選択できます。

エージェントノード機能
Dify V1で実装されたこの機能により、複数のAIを組み合わせた複雑な処理を比較的簡単に実装できるようになりました。これにより、ビジネスロジックの複雑さに対応できるAIアプリケーションの開発が可能になります。


S-1グランプリの参加者たちは、このDifyを活用して、日々の業務で感じていた課題を解決するAIアプリケーションを自ら企画・開発しました。Difyのような直感的なツールがあったからこそ、プログラミングの専門家でなくても、実際に業務に役立つAIソリューションをかたちにすることができたのです。

私たちが考える「AIの民主化」とは、こうした技術的なハードルを下げることで、ビジネスの最前線で働く一人ひとりがデジタル変革を自分ごととして推進できる環境をつくることだと感じています。

S-1グランプリの背景と目的

「AIツールを活用したソリューション企画の思考法を学ぶ」「創造的なAI活用のスキルを養う」—これがS-1グランプリの掲げた目標でした。

コンテストを企画した背景には、AIの民主化という大きなビジョンがありました。技術的専門知識を持つ一部の人だけでなく、ビジネスの最前線で働くメンバーこそがAIを使いこなせるようになることで、現場の課題解決が加速するという考えです。

審査の仕組みと独自の工夫

S-1グランプリの審査は、「人間の審査員」と「AI審査員(Claude)」という二つの視点から行われました。

この二重の審査体制には意図があります。

人間の審査員はビジネス的な観点(課題設定の適切さ、スコープの定義、AIのフィット度合いなど)を重視し、「アイデアの新規性」「アプリの動作性」「ユーザーの体験」「効率化の度合い」「Difyらしさ」の5項目を各0〜3点で評価。

一方、AI審査員のClaudeは、AIならではの視点から「ユースケースの明確さ」「プロンプト設計」「フロー設計」を同じく0〜3点で採点しました。プロンプトの中身など、より技術的で詳細な部分をチェックする役割です。

これは、人間がその場ですべてをチェックすることの難しさを補完する工夫であると同時に、「AIが審査する」という新しい試みでもありました。
さらに、オフライン開催でありながら、採点速報や雑談用のSlackチャンネルも併設し、オンラインでも盛り上がれるよう工夫しました。特にClaudeの審査で満点が出たときには、Slack上でも大いに盛り上がりました。

画像はイメージです

発表のプレゼンを一部公開!

それではその中から特に印象的だった事例をいくつかご紹介します。

【事例1】タイトル:「お前も、スター社員にならないか?STAR SHINE」

このアプリは、”若手層の育成” に対して課題設定されたアプリケーションです。キャリアや案件のタスクの相談を送ると、該当社員の過去発言や記事の内容を適宜参照しつつ、その人らしい口調で、フィードバックを返す、というアプリケーションです。

実際のアプリケーションの画面

このアプリケーションはRAGの技術を使い、該当社員の知識をあらかじめインストールしたうえで、適切な受け答えを実現しています。デモンストレーションでは実際のチャット画面が表示され、会場も湧きました。

【事例2】タイトル:「共感シナリオを洞察せよ。セミナリオ(セミナー+シナリオ)」

次にご紹介するのは、バントナーのマーケティング領域を担当しているメンバーからの発表です。メール文面の作成や、企画案の作成など、日常的に発生するクリエイティブな業務の一部をAIに任せることで、効率化を図りつつ自身の能力を拡張するといったアプリケーションが紹介されました。

実際のアプリケーションの画面

LOOPノードやイテレーションノードなど、Difyならではの機能をふんだんに活用した点も評価されました。

【事例3】タイトル:「企業の方針を指し示す。カジトリ」


このソリューションは、企業の情報や競合の情報を入力すると、自社内外の環境について、詳細に調査や分析をし、戦略や戦術を提示してくれるという、タイトルどおり企業の「舵取り」として頼もしい存在になりえるアプリケーションです。

実際のアプリケーションの画面

近年はDeepResearchも発達し、詳細なレポートもボタンひとつで出る時代ですが、誰が使ってもハイクオリティの出力を得るために設計された広大なワークフローは、会場を沸かせました。

【事例4】タイトル:「新卒向けショートカットの学習バディ:ショットカツ!」

2025年4月に配属されたばかりのメンバーが、数日の準備期間の末、出場してくれました。
(社会人として最初のプレゼンが本コンテストだったようです。)

実際のアプリケーションの画面

アプリが解決するのは「ショートカットを効率的に覚えたい」という新卒ならではの課題。
難度を入力するとクイズが始まり、間違えると解説も聞くことができます。

機能はシンプルながら、条件分岐や記憶保持、解説におけるLLMの活用、カリキュラムを通じた総合評価の作成など、Difyならではの機能を多分に盛り込んだアプリケーションでした。

これらのように、発表されたアイディアの数々は、いずれも実際の業務課題に焦点を当てたものが多かったものの、単なる業務効率化にとどまらず、「自身の能力を拡張する」ことに視点をおいたアウトプットも多くみられました。

参加者の気づきと変化

今回のコンテストを通じて、参加者たちの意識には大きな変化が見られました。
当初は「自分に使いこなせるだろうか」「少しハードルが高そうだ」と感じていたメンバーも、実際にやってみる中でAIへの心理的な壁がぐっと下がり、「業務でどう活用できるか」のイメージがより具体的に描けるようになったという声が多く挙がっています。

参加者からは、こんなコメントが寄せられました:

やり込めば、自分の発想をそのまま形にできる時代になったと実感した。課題や要件を整理してプロンプトを設計する重要性を感じた。

Difyは「都度考えるチャット型AI(Chat(GUI))」とは別軸の価値を持った設計ツールだと思った。両者は対立ではなく、補完し合う関係になりそう。

AIやDifyが一気に身近な存在になった。今後は「これ、Difyで自動化できるんじゃないか?」と思う場面が増えそうだし、実際に自分でもチャレンジしてみたい。

こうした経験を通じて、ただツールの使い方を覚えただけでなく、「AIと共存する未来の働き方についての理解が深まった」と感じたメンバーも多かったようです。実際、業務の一部をAIに任せることで、より創造的な仕事や本質的な課題に集中できると実感した人も増えました。さらに、AIアプリを作る過程で、自分の業務プロセスを見直したり、ビジネス全体の構造がよりクリアに見えてきた、という声も聞かれました。

コンテストの成果と気づき

S-1グランプリで特に印象的だったのは、参加メンバーのアイデアがどんどん進化していったことです。最初は「誰でも簡単に議事録が作れるツール」や「営業トークをサポートするツール」など、どんな業務にも使えそうなアイデアが多かったのですが、最終的な発表では「この業務の、この場面で使う」といったように、より具体的でピンポイントな課題設定へと変わっていきました。

どの業務にAIがフィットするのか、あるいは逆にフィットしないのか。こうした見極める力が、コンテストを通じて確実に磨かれたと感じています。

バントナーが描くAI活用の未来像

S-1グランプリを通じて見えてきたのは、AIの民主化に向けた大きな一歩です。技術の専門知識がないビジネス部門のメンバーでも、自分のアイデアをAIソリューションとして実際に形にできる―そんな体験が、チーム全体のAI活用を加速させるきっかけになっています。

私たちバントナーが目指すのは、AIの社会実装を加速させるために、業務を深く理解したメンバーによるプロンプト実装の強化です。AIの特性を理解し、それを前提に業務を設計する思考プロセスは、今後のビジネスパーソンに求められる重要なスキルとなるでしょう。

「アイディア次第でなんでもできるようになってきている」—これはコンテスト総括での言葉ですが、その通りの状況が目の前に広がっています。今後は技術的な制約よりも、「何を実現したいか」というビジョンと、それを具体化する能力こそが重要になってくるでしょう。

まとめ — 今日をAI活用の第一歩に

「今日をとっかかりに、どんどんAIの活用を広げていってほしい」— S-1グランプリの締めくくりで出てきたこの言葉は、バントナーにおけるAI活用におけるスタンスです。

かつては専門家だけのものだったAI活用が、ビジネスの最前線で働くすべての人にとって身近なものになりつつあります。AIの専門家ではないビジネスメンバーが、自ら考えたアイディアを実際に形にする—このことの意義は大きいと感じています。

自分のアイディアを実現するために必要なのは、もはや専門的な技術知識ではなく、業務課題を深く理解し、AIの特性を活かした解決策を発想する、創造力なのです。

S-1グランプリは、ただの社内イベントにとどまらず、AIと人が一緒に新しいチャレンジに取り組む場になりました。実際にやってみて、「こんなに面白いことができるんだ」と感じる場面がたくさん生まれたと思います。これからも、S-1をきっかけに、AIと人の可能性をもっと広げていけるような取り組みに進化させていきます。

※本記事はAIを使って文章を執筆しました